企業業績がおおむね堅調で、有効求人倍率も高止まりしていることもあり、特に中小の製造業では人手の確保に苦労しているようです。しかし、むやみに採用条件だけを変えても、解決しないケースも多いでしょう。なぜなら、求職者が見ているのは必ずしも給与だけに限らず、別のポイントでも企業を判断しているからです。今回は、現状把握とともに突破すべきポイントを紹介し、その解決方法について解説していきます。
就職人気ランキング
まず、就職戦線での人気という意味で、製造業はハンデキャップを負っています。現実を確認するために、大学生から見た人気企業ランキングを見てみましょう。
第1位:三菱東京UFJ銀行
第2位:東京海上日動火災保険
第3位:三井住友銀行
第4位:損害保険ジャパン日本興亜
第5位:みずほフィナンシャルグループ
第6位:全日本空輸(ANA)
第7位:日本航空(JAL)
第8位:サントリーグループ
第9位:三井住友海上火災保険
第10位:トヨタ自動車
(出典:「2017年卒の就活生が選ぶ人気企業とは」株式会社ディスコ・協力 日本経済新聞社)
製造業は、8位のサントリーグループと10位のトヨタ自動車が入っているだけです。製造業に絞っても、その次にはキリン、資生堂、日立製作所、明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)、味の素、三菱電機、パナソニック、アサヒビール、花王と続いていきます。
お気付きの通り、家電や食品などを扱う、いわゆるBtoC企業ばかりです。たいていのBtoB企業は、日常生活で触れる機会もないので知名度が低く、人気ランキングどころか、そもそも知られていないのが実態でしょう。
製造業への就職状況
平成24年3月に、大学の各学部を卒業して就職した人のうち13.1%(約30,000人)が、製造業に入っています。これは、卸売・小売業の17.0%、医療・福祉業の13.7%に次いで大きな割合です。(出典:文部科学省「平成24年度学校基本調査(確定値)」)
また、3年後の産業別離職率は15.6%と、全産業のなかでもっとも低くなっています。6人に1人以上が辞めている計算ですから、それでも多いと思うかもしれません。しかし、半分近くが辞めている教育・学習支援業や、宿泊・飲食業に比べれば、全くましな状況と言えるでしょう。(出典:厚生労働省「新規大学卒業就職者の産業別離職状況」平成24年)
つまり、製造業は入ってもらうまでは人気がないものの、いったん入社した後は「住めば都だ」と考えられている姿が見えてきます。
製造業を希望する求職者の特徴
新卒の求職者には、大きく分けて2種類のタイプがいます。片方は本当にモノづくりが好きな人たちです。小さいときからクリエイター気質で、趣味や学校選びにも一本筋が通っているタイプでしょう。親や知り合いが製造業に従事しているなどの理由で、仕事といえば製造業しか頭に思い浮かばないという人もいるはずです。
もう一方は、人気がある花形企業への就職に失敗した人たちです。「他社で振られて仕方なく来た」という考え方で、冷たくあしらう手もあるでしょう。しかし、必ずしも全く話にならないとは限らないのです。
人気企業への就職に失敗して、彼らは傷ついているはずです。もしかすると、子供の頃から抱いていた夢を断ち切られた直後かもしれません。しかし、短期間で立ち上がり、前を向いて説明会に来たのです。この後、仕事を進めていくうえで、何度となく挫折感や徒労感を覚えることもあるでしょう。彼らはそのときにも再び立ち上がれる精神力、つまり仕事に必要な素養を持っていると、既に証明しているのではないでしょうか。せっかく来てくれたのですから良いところも見つけてあげないといけません。
会社を選ぶ時に見られているポイント
給与をはじめとする、雇用条件や待遇は改めて述べるまでもないでしょう。しかし、採用の現場に現れる求職者は思わぬポイントを見ていることがあります。場合によっては、給与より重視していることさえあるのです。これは、まだまだ考え方が幼い新卒者だけに限った話ではありません。転職しようと活動している社会人もレベルこそ異なるものの、着目ポイント自体は同じようなものです。
自分の実力が発揮できるか
本当に実力があるかは別にして、多くの新卒者は自信に満ちています。自分が仕事をすれば、必ず成功すると根拠なく思い込んでいるからです。しかも、今まではバイトだからと甘やかされ、許されていたことに気付いていません。ですから、社会人としての仕事もバイトの延長として簡単に考えがちなのです。
しかし、それを大人げなく否定する必要はありません。正体不明の「実力を発揮すれば」ではなく、素晴らしい「成果を上げれば」それに見合った対価が与えられるのは事実だからです。
いわゆるブラック企業ではないか
インターネットでの情報共有や報道により、ブラック企業という言葉は既に定着した感があります。しかし、最近はそもそも労働法規が守られていないといった真っ当な指摘にとどまらず、さらに定義が拡大しているようです。宗教のような精神論が先立つとか、やたらに奉仕精神を強調するといった企業も「ブラックぽい」とみなされて、敬遠される傾向があるのです。
親や友人に自慢できるか
くだらないことのように思うかもしれませんが、人は所属する企業・団体にステータスを求めるものです。特に新卒者の場合は同窓会などで就職先を聞かれがちなため、非常にナーバスになっています。どこに就職したと発表した時に、友人たちから「すごい!」と言われたいわけです。
また、主に母親だと思いますが、知名度が低い企業は「そんなところで大丈夫なの」などと引き止められるケースもあります。もし、それが原因で内定辞退でもされたら由々しき事態です。
着目ポイントをリクルート動画で提示する
見られているポイントが分かれば、後はそれをいかに良く見せるかの問題です。その際、長い言葉や文章でダラダラ説明するより、リクルート動画で一気に「魅せる」のは、非常に効果的でしょう。ポイントごとに具体的な映像制作の方針をご案内します。
あなたの実力が発揮できます!
実力次第でステップアップできることを示します。その証拠として、社員の仕事ぶりを紹介するのが良いでしょう。手際よく仕事をこなし、苦もなく生活する、さっそうとした姿を描写するのです。求職者は身近な先輩の姿を、将来の自分として捉えます。「かっこいい」「こういう風になりたい」と思わせるのがゴールです。
ブラック企業ではありません!
一方で、年の離れた社長が長々と訓示めいたことを言い出すと「ブラックぽい」と一蹴される可能性があります。新卒者が社長の姿に将来の自分を見出すことは少ないですし、なにより説教は大嫌いです。就職後も社長と会話を交わす規模・業態であればともかく、普段は話すことも少ないのであればリクルート動画には不要の要素かもしれません。
親や友人にも自慢できます!
もし知名度が足りないなら、それを補う工夫が必要です。たとえば、お取り引き先のなかから有名企業を選び、担当者にお願いして動画のなかで褒めてもらうのです。井戸端会議で「ウチの主人はどこそこに勤めておりまして」と自慢する人がいるように、誰と付き合っているかというのは有力なステータスシンボルの一つです。
「そんな会社知らない」
「いやいや実はこんな有名企業と取引があるんだよ」
「すごい!」となれば、求職者も顔が立ちます。
さいごに
今回は一般的な新卒者の視点からポイントをあげましたが、どういった人材を採用したいかでリクルート動画も変わってきます。新卒者であれば極端な話「たのしそう」で入ってくれますが、中途採用になれば「これで食えそうか」と、現実的になってきます。さらに、エリートクラスであれば「やりがいがありそう」かどうかも着目ポイントになるでしょう。仕事ができるのは当たり前で、もはや自己実現の手段として考えているからです。それぞれに合わせたストーリーを設計し、効果のある映像制作をしていきましょう。