「さて展示会だ!流行りの動画展示を我が社もやろうじゃないか!」というチャレンジ精神は素晴らしいものです。しかし展示会ならではの問題を把握していないと、せっかくの動画がムダになってしまうかもしれません。
ここでは、よくあるミスを洗い出して正しい使い方を提示し、更に具体的な作成TIPSにも触れていきます。
展示会における動画の役割
展示会ブース動画でよくある設計ミス
紙芝居のように商品画像が流れ、ナレーションもただ商品名と価格を読み上げるだけ。そんな動画を作ってしまった、見てしまった経験はありませんか?
これは、全ての商品やサービスを、まんべんなく正確に紹介しようとするあまり、ダラダラになってしまったという明らかな設計ミスです。
一方で、全部のブースを見ようと足早に進む来場者たち。そんな展示会でのファーストアプローチは、ほんの数秒で決まります。15分もあるやたらに凝った動画を作っても、一番肝心なクロージングが流れている頃には、相手のお客様は20件も先のブースで、別の話をしていることでしょう。
動画は素晴らしい力を持っていますが、間違えた使い方をすると実力を発揮できません。長時間見てもらおうという気持ちは分かりますが、スピード勝負の展示会向きではないのです。出来ないことを求めても仕方ありません。
そこで展示会で使う動画には、来場者を「お?」と思わせて足止めをする、つまりストッピングツールとしての役割に徹してもらうことが得策です。
五感を刺激する
ストッピングパワーを発揮するためには、人間の五感を刺激するのが有利とされています。
例えば、ウナギ屋さんや焼き鳥屋さんが、うちわで扇いでいるのは、香りを遠くまで行き渡らせるため。タレの焦げる良い匂いをお届けすることで嗅覚を刺激し、街行く人に「どうやら近くに美味しいものがあるぞ」と気付かせるためだとされています。ゆるキャラなどのきぐるみも、見た目の可愛さと、思わず触りたくなるフワフワ感で、女性や子供を引きつけるのです。
その点は動画も同じ。視覚と聴覚という、五感の中でもとりわけ強いストッピングパワーが使えます。しかも、一般的な製造業の展示会では、嗅覚や味覚に訴える展示は、難しいので基本的に実現不能。また触感という意味で、直接モノを体験できる実物展示はアリですが、全ての製造業者がそれにふさわしい商品を持っているとは限りません。よって五感のうち、残された視覚と聴覚を併せ持つ動画展示こそ展示会ツールの花形、ストッピングパワーの頂点と言っても過言ではないのです。
しかし動画の力を正しく発揮するにはコツがあります。以下、具体的な例を見ていきましょう。
具体的な作成TIPS
動画に登場する説明役に気をつける
ネクタイを締めたおじさま方が無愛想に座っているブースより、かわいい女性スタッフがニコニコしているブースの方に人が集まっている。展示会ではよく見る風景です。
ですから展示動画にも、説明役として女性タレントを登場させましょう。別にギャラが高額な有名芸能人である必要はありませんが、美しい見た目で視覚を、きれいな声で聴覚を刺激し、通り過ぎようとする来場客に、足を止めてもらうのです。
通販番組のエッセンスを取り入れる
やたらに声の高い社長が出てきて、商品特長をまくしたてるというのも、確かにインパクトはあります。しかし先に書いた通り、尺の長い動画は展示会のスピード感には合わないので、通販番組を作るつもりで動画を考えてはいけません。
しかし、同じ商品なのになぜか買ってしまうという、あのテクニックだけなら、使わない手はありません。冗長にならないよう気を付けつつ、そのエッセンスだけを真似してみましょう。
通販番組をよく見て要素を分解してみると、商品が入れ替わっても、ほとんど同じことを繰り返しているのが分かります。
・売れてます
・安いです
・今だけ限定
・私も使っています
・特典付き
・当社負担
・下取りで更にお安く
──等など、誰でも聞いたことがあるフレーズが並びます。
全部を盛り込むと長すぎますから、これらのうち、最もストッピングパワーを持っているワードを選んで取り入れましょう。もちろん、売りたい商品やサービスと合っているものです。
音量の設定に注意
多くの展示会では、前日の夜に搬入セッティングをするはずです。設計通りにブースを組み立て、動画をテストしてみるのもこの時でしょう。しかし、前日は良好だったのに、当日になってみるとほとんど音が聞こえない。音量を大きくしてもまだ不足だったり、音割れを起こしてしまうなどといったケースがあります。前日夜の静かな会場と、開催当日の雑踏、近隣ブースの声や音といった妨害要素の違いを、計算できていなかったわけです。
賑やかな展示会で十分に聴覚を刺激するには、思っている以上に音量が必要です。静かな場所だとうるさいと感じるほどでも、多くの音が入り交じる開催中は、丁度良いくらいになります。
そして、そういう大音量を出すには、パソコンやモニターに付属しているスピーカーでは力不足。オーディオ並みのスピーカーが必要になりますので、事前に準備しましょう。
尺はテレビコマーシャルの長さで
もしブースの幅が約2メートルだとすれば、普通に歩くペースで1.5秒、ゆっくり歩いても3秒程度で、来場者は通り過ぎてしまいます。この人たちの目を引くためには、映像がいつもクライマックス状態でなければなりません。何分もダラダラとした商品紹介が流れ、最後に肝心なお得情報が数秒流れるというような設計は最悪。たまたま最後の部分に通りがかった人は「お?」と思ってくれるかもしれませんが、そのまえ数分間に歩いていた人は「な~んだ、よくある商品紹介か」と通り過ぎていくだけです。
そこで、まず常にマックステンションであるために、一周の長さはテレビコマーシャル(CM)の尺である15~30秒を目指しましょう。難しいと思うかもしれませんが、実際に思い返してみれば、ご自分でも印象に残っているCMが必ずあるはずです。たった一度見ただけで忘れない、そして何が特長の商品だったか、叩き込まれてしまう、そんなCMこそ素晴らしいCMです。みんなそれを同じ15秒の中に詰め込んであるのです。
実際にこの世に存在しているのですから、展示映像にだって出来ないわけがありません。もちろんCMは、映像制作や音響のプロが技術の粋を尽くして作るものですから、専門家に手伝って貰う必要はあるでしょう。しかし、たったそれだけの手間とコストで、「展示会で集客できる動画」と「出来ない動画」が決まってしまうのです。やったもの勝ちが分かりきっているなら、すぐに実行するべきでしょう。
動画素材をムダにしない
長時間動画はアフターフォローやネット流布
このようにして作った展示会ブース動画は、言いたいことがあるうちほんの一部を、ギュッと圧縮してしまったものです。ですからその制作過程で、泣く泣く捨てざるを得なかった素材が、たくさん残ってしまうでしょう。しかし、これを無駄にするのはもったいない。再編集して5分、10分といった長時間動画に仕立て直すのが得策です。
時間の限られた展示会では、興味がありそうなのに足早に立ち去ってしまったお客様もいたはずです。その気があるなら時間の余裕がある時に、少し長い動画をじっくりと見てくれるかもしれません。また、展示会そのものに来場できなかった潜在顧客には、せっかく作った動画だけでも見て欲しいものです。
そこで、素材をリサイクルした長尺バージョンを作っておけば、ディスクに焼いて展示会場で手渡したり、インターネットにアップロードして顧客にURLを伝えたり、活用法は色々と想定されます。もしかすると、時間を持て余した帰りの新幹線や飛行機で、またホッと一息ついた宿泊先のホテルで、さっそく見てくれるかもしれません。
まとめ
今まで見てきたように、できるだけ目的を絞り、そこに最大限のエッジを効かせることが「展示会で集客できる動画」のコツ。紙のチラシに置き換えればキャッチコピーとリード文程度、ズバッと端的に表現するほど効果的です。もう、要素をてんこ盛りにしたダラダラ動画からは卒業して、展示会を成功に導きましょう。