映像制作の工程の大まかな流れ
映像制作のおおまかな流れは以下の形が一般的です。まずは全体の打ち合わせを行い、どのような方向性で進めるか企画構成を話し合うことから始まります。それから実際に撮影を行い、必要な音声やナレーションを収録することになります。そして仮に編集した映像を依頼者と確認した上で本編集し、パッケージや包装の有無などといった最終的な納品形式に合わせて完成させるといった流れを踏むことが多いです。
またこの流れは依頼者の希望が反映されやすい順にもなっています。企画の段階で希望を出しておけば話の筋が大きく外れることはありません。また撮影した映像が気に入らないと本編集の時点でいっても、再度、撮影が必要になり、納期に間に合わないかもしれません。納品の段階に近づくにつれて、制作会社に進行を委ねることが多くなるので、流れを抑えながらより良い映像が出来上がるように早めに希望を出していくことが重要です。
流れをしっかりと理解するためにもここでは順を追って説明していきます。
1.打ち合わせ(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
映像制作に必要な機材は、どのように映像を使用するかで大きく変わってきます。使用する目的、ターゲットは何かに合わせて映像を変える必要があるからです。YOUTUBEなどWEBで使用する映像と4Kハイビジョン向けの映像では画質やデータ量などが違うのは直観的にご理解いただけると思います。なので、打ち合わせは、単なる顔合わせでなく、映像制作の手法や制作にかかる費用、納期などが決まる重要な工程の一つと考えるべきです。
打ち合わせに必要な時間は内容次第で変わってきます。単に「映像をみるのは誰か」などヒアリングシートを使いながら確認するだけ、あるいはSKYPE等で打ち合わせをするのみといった業者も現れていますが、フルに撮影を行い、CGを多用するといった凝った内容で制作したい場合などは、打ち合わせも1回では終わらず、数回、時間をかけてということになります。通常、打ち合わせの費用については、制作進行管理費などに盛り込まれることが多いのですが、遠方で対面を希望する場合は別途交通費等の費用を請求されることもあるので、こちらも確認する必要があります。
2.企画構成(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
制作目的については打ち合わせの時点で確認済みかと思いますが、この他にも撮影前までに決めないといけないことがあります。例えば、作品の長さ、納品メディア形式、ナレーションの手配の有無、台本の内容などです。
中でも、実際の撮影で、大切なのが台本・シナリオです。このシナリオ作りこそが、企画・構成の柱になるからです。完成度の高い映像づくりには撮影技術よりもきちんとしたコンセプトをもったよい企画の方が影響力が大きいとされます。
費用はケースバイケースです。
時間については、依頼内容にもよりますが、制作会社次第になることが多いです。尺が短い場合は数日で終了ということもある一方、長い映像の台本作成まで含めると数週間かかるケースもざらにあります。ですが、内容によっては、短いものほど編集が難しい場合もあります。逆に、シナリオを用意して、時間もコストも削減することも可能な部分ではあります。撮影前の重要な話し合いになるかと思いますので、慎重に確認を進めるべき工程です。
3.撮影(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
撮影は大きく分けるとロケと屋内撮影の二つになります。撮影の値段や定価の相場はあってないようなことが多いので、事前に、確認、交渉をしっかり行いましょう。
実際の撮影で必要とされる項目を下記にリストアップしました。このような項目が撮影費用に含まれてきます。
撮影機材、照明機材、ロケ地代、スタジオ費(室内撮影の場合)、美術費(背景、電飾、衣装などの材料費)、フィルム・テープ費(HDDの場合は無料)、CG制作費(必要に応じて)、音楽、効果音費(既存の音源でも使用料が発生)、演者費などです。
撮影や照明機材はレンタルすることもありますが、最近は低コスト化してきています。
撮影時間については、制作する長さや内容次第で大きく変わります。短いものならば1日8時間計算で1日、長いものだと1週間近くかかる場合もあります。
4.ナレーション(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
長丁場の撮影と違い、ナレーションは短時間で済ませることが多い工程です。仮編集の時点ですべての音を入れないこともあるので、編集の後にナレーションを録音することも多々あります。もちろん音楽のみで説明等はすべてテロップ(文字)でという場合にはこの工程は省かれます。
映像作品のナレーションを収録する場合、専門のスタジオで、ナレーターに参加してもらいながら収録を行います。また、直接ナレーションの発注を行い、ナレーターからデジタルデータで納品してもらう方式もあります。この場合、ノイズカットやボリューム調整等を行ったデータでもらえることもあります。(その場合、編集での加工時間が少なくなり、コストダウンにもつながります。)
それに合わせて、ナレーターへの発注もこれまでは1時間当たりいくらでという形式が多かったのですが、文字数による発注という形式も多くなりました。かかる時間は、スタジオでは数時間、データでも数日で納品になることがあります。映像制作の流れでは後の方に回されることが多い工程なので、時間に追われて収録しないといけない場合もあります。事前に想定しておくべき工程です。
5.編集(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
編集の流れをおおまかにまとめると以下のようになります。
仮編集(オフライン作業)、本編集(最終的な仕上げに向けた編集作業)MA(全体の音のバランスなどを調整する作業)です。
6.お客様の確認(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
映像制作中に確認が必要な場面はいくつかあります。まず打ち合わせが終わり、企画構成の時点で内容を見てこの案でOKか否かの確認がされます。ついで台本・シナリオの内容で問題となる部分がないかのチェックが行われます。コンプライアンス上問題がないか、使用している用語に間違いがないかなど、この時点で確認が行われることが通常の形です。撮影に関しても立ち合いなどを行う場合は都度確認が求められますし、編集立ち合いも同様です。ナレーション原稿もチェックが必要になります。
ただもっとも重要なのが、仮編集のチェックです。ほぼ完成形が見えて来たこの時点で修正を行わないと、納期を考えても引き返すのは難しくなるからです。
時間についてですが、全体の工程でどのようにスケジュールを割り振っているかで決まってきます。立ち合い編集などはその場で判断を求められることもあるし、脚本やナレーションのチェックには日単位で時間を費やすこともあります。全体の時間軸の中で臨機応変に対応できることが理想です。
コストについては、提出物を求めるたびにかかることが一般的です。例えば、仮編集済みのDVDを複数枚ほしい、あるいは最終のパッケージ見本がほしいなどという場合には、別途費用として計上されます。見積もり内容をよく見て、都度、確認しながら指示を行う必要があります。
7.納品(何をするか、どれくらいの時間がかかるか、どれくらいの費用が見積もられているか)
納品形式にもいくつかあります。ブロードバンド配信用などの場合は、ファイルを作成し納品用にCDなどにデータを焼いて完成です。DVDなどのメディアを使う場合はマスターを制作する必要があります。マスターから必要枚数プレスして納品という形になるので、DVDやブルーレイの場合は、そのプレスしたものをどうするか、パッケージするか否かでまた費用が変わってきます。
一般的に、納品する際にかかる費用としては、マスター製作費もしくはコーディング費用(動画のフォーマットを調整する作業)、DVDやブルーレイなどのメディア代(手元に置いておくメディアとしての費用)、プリント費などが計上されます。また、最終的な納品データや撮影したデータを保存・管理しておく「管理費」も必要になる場合もあります。パッケージ費用は別項目で計算されることもあります。
納期的には、ファイル納品は即時対応も可能ですが、メディアやパッケージにプリントをする場合は、梱包まで含めると1~2週間以上かかることもあります。正確な納期が最初から把握したい場合は、プレスする枚数だけでなく、パッケージが必要な枚数、あるいは保存する枚数まで発注時に決定しておくべきです。
会社によっての違いはどこで出るのか?
映像制作の見積もりを取ると同じ依頼内容でも全く違う金額が出ることがあります。何が違うのでしょうか。
映像制作の料金は、主に機材等のコストと人件費に左右されます。「人」や「時間」にかかったコストは、出来上がった映像からではわかりません。30分の映像よりも3分の映像の方が製作費が高いといったことさえあるからです。「企画」「撮影」「編集」の各工程で、どのように時間を使い、どの程度人が作業するかで、映像制作の金額が決まってくるのです。工程の中で、制作会社が何を必要と考えるかで、出来上がる作品のクオリティとコストが変わるのはそのためです。
今はいろいろな選択肢がある時代です。作りたい内容と必要な品質に見合う方法をしっかり選ぶ必要があります。制作にかかる費用と出来上がりの品質を見極め、目的に合った映像制作を行いましょう。